臨床心理士の資格と仕事について
臨床心理士は、財団法人日本臨床心理士資格認定協会が発行している資格です。民間資格ではありますが、心理カウンセラー関連の資格のなかでは知名度が高く、有用性も比較的高い資格といえます。
臨床心理士とは
臨床心理士は、心のバランスを崩した人に臨床心理学の理論による心理療法を行う仕事です。数ある心理職関連の資格の中でも、試験の難易度が高く、人気も抜群の資格です。
臨床心理士の資格試験を実施している財団法人日本臨床心理士資格認定協会は、文部省が認可していることもあり、高度な心理職を目指すのであれば必須の資格です。
臨床心理士を取得するには?
臨床心理士の資格を取得するには、財団法人「日本臨床心理士資格認定協会」が実施している試験に合格する必要があります。
この試験を受ける要件としては、協会の指定を受けた第1種、第2種の指定大学院の修了が重要となってきます。指定大学院制度は、臨床心理士が心の専門家として、一定水準以上の心理学的な知識と技能を持つことを期待されたことから始まったものです。
臨床心理士試験の受験要件には、以下のようなものがあります。
- 協会が認可する指定大学院(第1種・第2種)を修了した人
- 臨床心理士養成における専門職大学院を修了した人
- 外国で、上記のいずれかと同等の教育歴があり、日本国内での心理臨床経験が2年以上ある人
- 医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験がある人
※詳しい受験資格は、試験実施団体のHPを参照してください。
臨床心理士の試験は、100題のマークシートによる選択問題と論文記述問題からなる「1次試験」と、口述面接試験による「2次試験」の2つ。1次試験の選択問題の成績により、2次試験の受験資格が考慮されます。
資格審査試験に合格後、資格認定証書の交付手続きをすると、臨床心理士の資格が取得できます。この資格は、5年ごとの更新制です。
臨床心理士の難易度は?
臨床心理士の資格取得の難易度について調べてまとめました。心理臨床の仕事をするにあたり臨床心理士は国家資格ではなく資格そのものは必要とされません。しかし就職の際に資格を求められる求人が多くあり、より良い仕事を見つけるためには有利となります。
平成28年の臨床心理士の合格率はおよそ63%。受験者の人数については増加傾向にありましたが、ここ2、3年は減少しています。これは臨床心理士と職務内容が大きく重なる公認心理師という国家資格ができたことが関係あると考えられます。
実務経験の条件を満たせば受験資格が得られる公認心理師や認定心理士と比較して、指定の大学院を修了しなくてはならない臨床心理士の資格取得は簡単ではありません。また、筆記試験の他に面接もあり民間資格の中でも難易度が高いと言えます。
さまざまな分野で活躍する臨床心理士
臨床心理士は、医療の分野だけでなく、福祉、教育、司法、大学など、幅広い分野で活躍することができます。スクールカウンセラーになる要件では、臨床心理士が挙げられており、学校の現場で生徒や教員などの心のケアに携わる人も多いのが特徴です。
臨床心理士の資格を持っていれば就業に有利。家庭裁判所や児童相談所などで、必要に応じて心理学的な手法を用いた援助が可能です。また、企業の心理相談室などでの援助もできます。
実際に臨床心理士の資格を取得した人の体験談
- 仕事をしながら大学院を受験して臨床心理士の資格取得を目指そうと考えていたので、大学院受験に何度も失敗し、資格を取るまでに何年もかかりました。
でも、今思えばそうやって回り道をしたり、一般企業の仕事を経験したことも、臨床心理士の仕事に活かされているのかなと思います。
資格取得後も常に勉強の日々で、大変なこともありますが、やりがいは本当に感じられる仕事です。ただやはり民間資格ゆえに待遇面で理不尽を感じることも多いので、いつか国家資格になるといいなと思っています。
- 現在福祉系の企業で働いています。以前離婚をし、シングルマザーになりましたが、資格を持っているおかげでわりとすぐに仕事が見つかり、資格を取ってよかったと思いました。
臨床心理士は給料は安いですが、女性が多いですし、年齢に関係なく仕事ができるのは利点だと思います。
また、患者さんを助ける達成感はもちろん、いろんな患者さんと接することで自分自身も成長することができるのが、この仕事の大きな魅力の1つです。
- 実際に現場に出て使われるということを意識して学んでいくと、資格を取得してから上手く役立たせることができます。いざ仕事になるとわからないことが多いと思いますが、失敗を繰り返しながら技術も洗練されますので、心配いりません。臨床心理士は人の心と向き合う仕事です。専門的な知識だけでなく、積極的に人と関わったり、自ら学ぼうとする姿勢が大切です。はじめのうちはカウンセリングの経験が少ないのは当然ですが、全くないのは就職するのに苦労するはず。テキストで学ぶのと同時に実習も積み、現場の感覚に少しでも馴染めるにするとよいですね。資格は最低限勉強したことの証にはなりますが、実践して役に立つかどうかは別問題ですから。
- 臨床心理士と同類の資格として医療心理士があります。医療心理士はもともと医療機関で働くことが前提になっているもので、特化して学んでいるため、働き口を医療機関に限定していない臨床心理士よりも医療の現場で働きやすいです。といっても精神外科と同様には仕事をすることができません。一方で、臨床心理士は病院でも働くことができますが、資格程度の知識では足りないので、その後も勉強する必要があります。ただ、病院に限らず、教育、福祉、司法など様々なジャンルで活躍できる可能性があるのが臨床心理士です。ゆえに、就職・転職の幅は広いと言えますよ。
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