心理学の1ジャンルである、産業心理学・組織心理学についてまとめています。
産業心理学は、文字通り「産業」のための心理学で、職業・労働・集団・組織・マーケティング・消費者行動などを心理学的に観察・分析して研究します。
主に3つの研究分野にわけられます。
産業心理学の研究は、心理学者のミュンスターベルクが1912年から14年にかけて著した『経済生活における心理学』『心理学と産業能率』『精神工学の原理』の一連の業績に始まるとされています。
「仕事に最適な人間の選択」「最良の仕事をなしうるための条件」「人と仕事の接点としての経済効果に関する研究」の3つのテーマが研究され、これらは後に人事心理学や人間工学、マーケティングなどをはじめとする応用心理学のさまざまな分野に発展していくことに。
その後、1924年から32年にかけてアメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で実施された『ホーソン研究』によって、労働者の作業能率は、客観的な職場環境よりも、仲間意識や集団内の規範によって左右されるという説が導かれました。
ホーソン研究による画期的な発見の後、1960年代後半から産業心理学も変化していき、組織心理学へとつながっていくことになります。
組織心理学は産業心理学を母体とした応用心理学の新しい分野で、それまでの伝統的な産業心理学の考え方を批判する形で形成されました。
端的に言うと、組織における人間行動を、個人とそれをとりまく組織環境との相互依存関係のなかで理解しようする考え方です。
組織心理学は人間の心理・行動を組織との関わりから考えていき、組織がその構成員の心理や行動にどのような影響を及ぼすのか、逆に個々の構成員の心理や行動は、組織全体の業績にどのように結びつくのかを考えていくものです。
組織心理学のパイオニアとして名高いアメリカの心理学者エドガー・シャインは、個人が仕事をする際の達成感や有意義さの拠り所となる価値観のことを『キャリア・アンカー』と呼びました。
時代や環境、年齢の変化によって、どんな仕事に 就きたいかの希望は変化しても、どのような働き方をしたいかという価値観(キャリア・アンカー)は変わらないと定義しています。